はじめに
将棋における基本の勉強は「詰将棋」、「棋譜並べ」、「実戦」の3つであると思っています。これは昔から言われていることで、昔も今も変わらないと思います。
しかし、現在は第4の勉強法として「ソフト研究」があります。プロ棋士はもちろん、高段者の方たちなら常識的にやっていることでしょう。
私は、ブログで対局の振り返りの記事を書くためにソフトを使うことはありますが、序盤の研究のためにソフトを使ったことは今まで一度もありませんでした。
理由としては、
- 研究してもすぐに想定局面から外れてしまうだろうということ
- ソフトは棋書のように指し手を言語化してくれないこと
- 研究してもそもそも指し手を覚えられないこと(これは自分のせい)
- 結局将棋は終盤勝負であること
- 大変で時間がかかること
とまあ挙げれば色々あるわけですが、ふと、「そろそろやり始めても良いのではないか」と思ったわけですね。なんででしょうか()
思い立ったらやろうということで、早速、何をテーマにするか考えました。テーマに適した戦法の条件として、①大会で使える戦法、②よく使うけどあまり得意ではない戦法、が挙げられます。そこで朧気ながら浮かんできたんですね、後手横歩取りという戦法が。
さらに、横歩取りといえば青野流が猛威を振るっています。私も1冊だけ横歩取りの本を持っていますが、かなり破壊力が高いと思います。
今回はその対策としてプロ間で一時期流行った△4一玉、△4二銀、△2二歩型を中心とした研究をつらつらと書いていこうと思います。これに関する本は色々ありますが、持っていないので独自研究となります。
続いて今回の研究で使用したソフトについて。今回はスマホ版の「ShogiDroid」の水匠5を使用しました。いつも対局振り返りの際に使用してるやつです。
また、ソフトで研究した手順を記録しておくのに「将棋ノート」を使用しました。分岐やコメントが追加できるので使いやすくていいですね。
さて、ようやく本題に入ります。今回ははじめに記したとおり大長編なので、わかりやすいようにフローチャートにまとめました。どん。
・・・小さくて分かりづらいですね。では、もう少し拡大してみます(4枚の画像を縦に並べています)。
まあこれでも(局面図がないと)絶望的に分かりづらいですね。分岐が複雑に分かれています。それだけ将棋は奥が深いということです。そういうことにしておきましょう。
研究の結論
解説の前に、先に局面ごとの分岐やその結果を書いておきます。気になる変化があればその変化だけ見に行くという使い方をすると良いと思います。なお、第〇図は、研究本編の図と対応しています。
パート1
第3図以下
①▲7七桂△3五角▲同歩… →互角
②▲4五桂△8八角成▲8三歩△同飛▲5三桂不成… →先手優勢
▲4五桂△4二銀… →互角
③▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲8五歩… →互角
第13図以下
①▲7七桂△3五角▲同歩… →互角
②▲9七角△3五角▲同歩△5二玉… →互角(先手やや損)
③▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲8五歩… →互角
▲8三歩△同飛▲8四歩△同飛▲7七桂… →互角
第21図以下
①△2三金▲3三飛成△同桂▲6六角… →互角(先手作戦勝ち)
②△8八角成▲同銀△4四角▲7七桂△8四飛… →先手よし
パート2
第30図以下
①▲3三飛成△同桂▲6六角… →互角(先手作戦勝ち)
▲3三飛成△同金▲6六角… →互角(先手作戦勝ち)
②▲3五飛△8四飛▲7七桂… →互角
▲3五飛△8四飛▲9七桂… →互角
▲3五飛△8四飛▲2五飛… →互角
第42図以下
①▲4五桂△6四歩▲2四飛… →後手ややよし
②▲6五桂△6四歩▲2三歩△同歩▲4四飛… →先手有利
▲6五桂△6四歩▲2三歩△6五歩… →第55図への変化
③▲4六歩△3三金▲4四飛△同歩▲4五歩… →パート3への変化
④▲2四飛… →パート4への変化
第55図以下
①△3二金▲同飛成△同玉▲2二角… →後手有利
②△3三金▲3五飛△7四銀… →後手有利
△3三金▲同飛成△同桂▲2二歩成…→後手有利
△3三金▲2二歩成△3四金▲2三角△5一玉▲3四角成△3三銀… →後手有利
パート3
第66図以下
①△4五同歩▲8三歩△同銀▲2三歩… →先手優勢
②△8七歩▲9七角△8九飛▲6五桂… →先手有利
③△6四歩▲4四歩 →第72図への変化
第72図以下
①△4四同金▲8三歩△同銀▲8五桂… →先手有利
②△3二玉▲8六歩△2三金▲4五桂△5二金▲4三歩成… →優劣不明
③△8六歩▲8四歩△同飛 →第78図への変化
第78図以下
①▲8五歩△8二飛▲4三歩成… →互角
▲8五歩△8二飛▲2三歩△同金▲4五桂△5二玉… →互角
▲8五歩△7四飛▲2三歩△2八飛▲2二歩成△同飛成… →互角
②▲6六角△8二飛▲4五桂△5二金▲3三桂成△同銀… →後手有利
▲6六角△8二飛▲4三歩成△同銀▲3三角成△同桂… →後手優勢
▲6六角△8二飛▲4三歩成△同銀▲4五桂△4四歩… →互角
▲6六角△8二飛▲4三歩成△同銀▲8三歩△同飛… →先手有利
▲6六角△8二飛▲4三歩成△同銀▲8三歩△同銀… →互角
③▲4三歩成△同金▲6六角△8七歩成… →後手ややよし
▲4三歩成△同金▲8五歩△7四飛▲2三歩… →後手有利
▲4三歩成△同金▲8五歩△7四飛▲7五歩… →互角
パート4
第119図以下
①△7五歩▲同歩△同銀▲同金△8七歩… →互角(やや先手持ち)
②△7五歩▲同歩△8七歩▲同金△7五銀 →第130図への変化
第130図以下
②▲6八銀 →第131図への変化
▲9七角△8六歩▲8八金… →互角
▲9七角△7六歩▲7五角△7七歩成… →互角
▲6五桂△6四銀▲6六歩… →互角
▲6五桂△6四銀▲4四角… →互角
▲7四歩△8六歩▲9七金△7二飛… →先手ややよし
第131図以下
①△7六歩▲6五桂△8八角成▲同金△5五角… →互角
②△8六歩▲9七金△5四歩▲2五飛△5五歩… →互角(後手持ちの変化多)
③△3三桂▲3五歩△3六歩… →互角(やや後手持ち)
△3三桂▲7四歩△7六歩▲6五桂… →互角(やや後手持ち)
△3三桂▲6五桂△8八角成▲同金△6四銀… →互角
以上
この記事では4分割した画像のうち、1枚目で示した範囲について書いていきます(1パートが非常に膨大になってしまったのでもっと小出しにすればよかったと反省しています)。なお、頑張って言語化して書いていきますが、分かりづらい箇所が多くあるかと思います。この記事は自分が後で見返すための記録帳、みたいな感じの扱いなので人に読ませる文を書く努力を怠っています。また、少しでも分量を抑えるため、解説では常体を用いています。
もう一つ補足を。分岐の最後に結果図を載せています。結果図の横に記したカッコ内の数字は、ソフトの評価値を表しています。ただ、その局面を1分しか読ませていない状態での数字なので、参考程度に捉えてもらえればと思います。
解説
改めて、フローチャート1枚目と目次を載せておくので参考程度にどうぞ。
基本図までの指し手
初手からの指し手
▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲5八玉(途中図)△4一玉▲3六歩△4二銀▲3七桂△2二歩▲3八銀△7二銀(基本図)
大変化の始まり
今回の研究は後手番の研究だが、符号の関係上先手番視点での局面図を掲載する。
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩となれば横歩取り濃厚の出だしである。本研究は▲5八玉(途中図)の青野流に対する研究である。代えて▲3六飛(参考1図)なら旧式横歩取りとなり、また違った展開になる。
後手は△4一玉〜△4二銀〜△2二歩と進める。この布陣が本研究の基盤である。△2二歩は角のラインを受けつつ、手筋の▲2二歩を消す味の良い手。反面、2筋で歩を使う攻めはなくなる。
分岐「25手目▲1六歩」
分岐「27手目▲1五歩」
基本図からの指し手①
▲1六歩(第1図)△8二飛▲1五歩(第2図)
大きな2択
基本図から先手は▲1六歩と▲9六歩(参考2図)の2つの有力手がある。前者は将来の端攻めを見据えた手で、後者は▲7七桂△8七歩に▲9七角の逃げ場所を作った手。どちらもかなり有力だが、最初は比較的あっさりと終わる▲1六歩を見ていく。
これに対して後手は△8二飛と引くのが良い。8六にいると▲7七角などで当たってしまい、後手にとって不都合な位置なのだ。
先手はここで①▲1五歩とさらに端を伸ばす、②▲9六歩とこちらも突いておく、③▲8四歩と飛車先を止める、3つの分岐がある。まずは①の変化から。
第2図からの指し手
△8八角成▲同銀△3三銀▲3五飛△4四角(第3図)
角交換
後手は△8八角成から角交換をして△3三銀〜△4四角と攻めるのが良い。代えて△9四歩のような手だと、▲8四歩(参考3図)と抑えられる手が厄介だ。この手は前述した分岐にもあるため、後ほど(パート2で)詳しく見ていくことにする。
分岐「33手目▲7七桂」
第3図からの指し手①
▲7七桂(第4図)△3五角▲同歩△4四銀▲3四歩△5二玉(結果1図)
バランスを取る
第3図から、飛車銀両取りに対して、①▲7七桂と跳ねる、②▲4五桂と無視する、③▲8三歩と叩く、という3つの対応がある。
①は最も自然な受け方だ。これに対して後手は飛車を取り、△4四銀と上がる。▲4五桂の先受けと3五の歩取りを見せた。先手は▲3四歩と伸ばすが、そこで△3六歩▲2五桂△2八飛とやっても、▲2七歩△3七歩成▲3九金(参考4図)のように対応されて攻めが頓挫してしまう。
▲3五歩には△5二玉(結果1図)とバランスを取るのが形で、互角の形勢。後手はこの後△6二玉と寄る手や、△8六飛と揺さぶる手がある。
分岐「33手目▲4五桂」
分岐「34手目△8八角成」
第3図からの指し手②
▲4五桂(第5図)△8八角成(第6図)
我が道を行く
続いて、両取りに対して先手が無視して桂を跳ねる変化を見ていく。「両取り逃げるべからず」の手に則った手だ。対して、まずは後手も△8八角成(第6図)と攻め合う変化を見ていく。
第6図からの指し手
▲8三歩△同飛▲5三桂不成△3一玉▲8四歩△同飛▲6一桂成△7八馬(第7図)
好手▲8三歩
ここで▲8三歩が絶好のたたきだ。△同飛に▲5三桂不成と王手金取りを掛ける。対して△5二玉は▲6一桂成△同銀に▲8四歩△同飛▲8五歩(参考5図)と飛車先を止めて先手優勢である。
△3一玉と逃げれば▲6一の成桂の位置が遠く、取る一手ではないため△7八馬と攻めるが・・・
第7図からの指し手
▲7五角△6四飛▲同角△同歩▲5一成桂(結果2図)
先手優勢
先手は王手飛車を掛ける。先ほどの手順で、▲6一桂成の前に▲8四歩を利かすのが肝心で、▲6一桂成△7八馬▲8四歩だと、△8二飛(参考6図)と引かれてパッとしない。金で馬を取れる状態で叩くのが肝心である。
飛車を取って成桂を寄った結果2図は先手優勢。飛車を取れれば攻めが繋がるからだ。
分岐「34手目△4二銀」
第5図からの指し手②
△4二銀(第8図)▲3二飛成△同玉▲7七桂△5五角▲4六歩△3七歩▲同銀△2九飛(第9図)
銀引きが最善
▲4五桂の銀当たりには△4二銀(第8図)とかわすのが後手の最善手である。対して単に▲7七桂と受けると△3五角▲同歩△3七歩▲同銀△4四歩(参考7図)で桂損に終わってしまう。そのため、先手は飛車を切って後手陣を薄くしてから▲7七桂と受けに回る。
後手は△5五角とのぞく。▲4六歩は「大駒は近づけて受けよ」の手。そこで△4四歩には▲6五角のラインが嫌なため、△3七歩とたたいて飛車を下ろすほうが勝る。
第9図からの指し手
▲2八角△4六角▲6五桂△8八飛成▲同金△6九銀▲4八玉△2八飛成▲同銀△同角成▲5九玉△7九角(結果3図)
後手の猛攻
1九の香取りを受けるには▲2八角と打つしかない。後手もゆっくりしていると▲3九金で飛車を取られるため、△4六角から猛攻する。△4六角に▲3九金は△同飛成、▲3九金打は△3七角成(参考8図)のように、受けても攻めが続くため先手も▲6五桂と攻める。
▲6五桂に対しては色々あるが、例えば、という攻め筋で△8八飛成〜△6九銀〜△2八同角成〜△7九角を示した。
結果3図は先手陣が凄い格好をしているが、ソフトの評価値は互角を示す。ただし、実戦的には後手が攻めきれそう、というのが個人的な見解である。
分岐「33手目▲8三歩」
第3図からの指し手③
▲8三歩(第10図)△同飛▲8四歩△同飛▲8五歩(第11図)
連打の歩
後手の飛車銀両取りに対する応手で最後に見ていく変化が、▲8三歩(第10図)からの連打である。歩切れにはなるが、歩切れになっても飛車先を止める価値が高いという判断である。
第11図からの指し手
△7四飛▲7五歩△5四飛▲2五飛△5五飛(途中図)▲同飛△同角▲7七桂△4二銀(結果4図)
やはり互角
第11図から△8二飛と引いても一局だが、本譜はより積極的に四段目で飛車を使う順。その際、△7四飛と途中下車して▲7五歩と突かせるのがポイントで、狙いの△5五飛(途中図)のぶつけがより効果的になる。▲2九飛なら△7五飛が金当たりだ。
飛車交換後、互いに陣形整備をした結果4図は互角。手持ちの角か持ち歩の多さか。どちらを持っても指せる局面だと思う。
分岐「27手目▲9六歩」
第1図からの指し手②
△8二飛▲9六歩(第12図)△8八角成▲同銀△3三銀▲3五飛△4四角(第13図)
基本方針は変わらず
第1図に戻り、△8二飛に今度は▲9六歩(第12図)とこちらの端も突く変化を見ていく。端の位置が変化しただけだから後手の基本方針は変わらず、角交換から△4四角(第13図)を目指す。
分岐「33手目▲7七桂」
第13図からの指し手①
▲7七桂(第14図)△3五角▲同歩△4四銀▲3四歩△5二玉(結果5図)
大差なし
▲7七桂と受ければ、先手も後手も少し前にやった変化と同じ道を辿ることになる。結果5図は結果1図と端歩の位置関係が違うだけ(結果1図は▲1五歩、▲9七歩)で他は全く同じだ。
そのため、結論は結果1図と同じく互角となる。▲1六歩型で端攻めの心配がないため、後手は△3六歩が少しやりやすいかも、というくらいの差である。
分岐「33手目▲9七角」
第13図からの指し手②
▲9七角(第15図)△3五角▲同歩△5二玉▲7七桂△4四銀▲3四歩(結果6図)
先手やや損か
飛車銀両取りに対して、▲9七角(第15図)という受けは▲9六歩を突いてあるからできる手である。変わった受け方だが遠く5三の地点も睨んでいる。
後手は同じように飛車を取り△5二玉と整える。△5二玉では△4二銀もあり、ここは好みの問題だ。
結果6図は結果5図から▲9七角とした局面と同じである。先手はこの角を活かすように指す必要があるが、それは難しいように思う。放っておくと△9四歩からただ狙われるだけの駒になってしまうため、▲9七角はやや損な受け方だ。
分岐「33手目▲8三歩」
第13図からの指し手③
▲8三歩(第16図)△同飛(第17図)
頻出の筋
最後に、飛車銀両取りに対して▲8三歩(第16図)の変化を見ていく。これは▲1五歩型のときにもあった変化である。
分岐「35手目▲8四歩」
第17図からの指し手①
▲8四歩(第18図)△同飛▲8五歩△7四飛▲7五歩△5四飛▲2五飛△5五飛▲同飛△同角(結果7図)
誤差の範囲
まずは歩を連打していく順を見ていく。これは結果4図と同じ進行を辿るため、やはり形勢は互角だろう。先手は▲1五歩を突いておらず端攻めに時間がかかるため、先手が手を作るのはやや大変か、というくらいだ。ほぼ誤差の範囲と見て良い。
分岐「35手目▲7七桂」
第17図からの指し手②
▲7七桂(第19図)△3五角▲同歩△4四銀(第20図)
細かい違い
先手は▲8四歩から連打するよりも▲7七桂(第19図)で受けるほうが勝る。この順は以前にもあったが、▲8三歩を入れていることがどう影響するだろうか。
第20図からの指し手
▲2三歩△同歩▲6六角△8七歩▲7九銀△6四歩(結果8図)
一歩千金
先手は第20図から同じように▲3四歩と伸ばすと、△5二玉ではなく△8七歩と打つ手が成立する。以下▲7九銀には△8九飛だから▲8七同銀だが、△同飛成▲同金△8九飛と強襲する。以前の変化(単に▲7七桂)では、そこで▲8八角と受ければ△7八銀、△7九銀、△8六銀のいずれも▲8二飛と打てば受かった。ところが、▲8三歩△同飛を利かして▲7七桂でこの強襲を受けると、▲8八角に△8六歩(参考9図)が一歩千金の手で攻めが繋がる。
以上より、先手は▲3四歩がぬるいため、▲2三歩△同歩▲6六角でより積極的に行くことになる。△8七歩には▲7九銀と引いて△8九飛には▲6五桂がぴったりだ。
後手が桂跳ねを防いだ結果8図は互角。後手は△7四歩〜△7三桂と陣形を発展させてから、好機で△3六歩や△8九飛とするイメージだ。
分岐「27手目▲8四歩」
分岐「28手目△2三金」
第1図からの指し手③
△8二飛▲8四歩(第21図)△2三金(第22図)
天敵
25手目▲1六歩編の最後の変化として△8二飛に▲8四歩(第21図)と飛車先を止める変化を見ていく。この▲8四歩は先手の有力手で、後手の天敵とも言える変化だ。
対して後手の手として、①△2三金と飛車を追う順、②△8八角成と角交換する順が対抗策である。まずは①から見ていく。
第22図からの指し手
▲3三飛成△同桂▲6六角△3二玉▲7七桂△6四歩▲1五歩(結果9図)
陣形勝ち
第22図から▲3五飛と引いても一局だが(後でこの変化も出る)、△8四飛(参考10図)で打ったばかりの歩を取られてしまう。それを嫌うなら▲3三飛成〜▲6六角で歩を支えるのが良い手になる。
後手は△3二玉で簡易的な囲いに収まり△6四歩で桂跳ねを防いだが、▲1五歩と端歩を伸ばした結果9図は、先手陣がのびのびしているのに対して、後手はどこかコンパクトな印象を受け、先手作戦勝ちだと思う。先手はどこかで▲5六角と打った手が八方にらみの好手になる。
分岐「28手目△8八角成」
第21図からの指し手②
△8八角成(第23図)▲同銀△4四角▲7七桂△8四飛▲1五歩△7七角成(第24図)
8筋奪還
続いて角交換する変化。この手の狙いは△4四角の設置から8四歩の除去にある。△8四飛を防ぎたいからと△4四角に▲6六角だと、△同角▲同歩△2三角で間接飛車金取りがかかってしまうので▲7七桂と跳ねておくくらいだ。
△8四飛に▲8五歩と受ける手もあり、以下△5四飛(参考11図)と回り、次に△3三桂(▲3二飛成の防ぎ)〜△7七角成の大さばきを狙う展開となる。
本譜、先手は8筋を受けずに堂々と▲1五歩と伸ばした。これには△7七角成(第24図)の大技が気になるが・・・
分岐「35手目▲8四飛」
第24図からの指し手①
▲8四飛(第25図)△7八馬▲8三歩△7四金▲8六飛(第26図)
飛車を取る変化
後手の△7七角成は色々な駒が当たっており、相手に選択肢を与える実戦的な勝負手だと思う。ここで▲7七同銀は△3四飛で論外だから①▲8四飛と飛車を取るか、②▲3二飛成としてから馬を取るかの2択になる。
まずは①から。▲8四飛△7八馬に▲8二飛成は△8三歩(参考12図)と打ち、△9二金と△8八馬の両狙いで後手がやれる。
先手は▲8三歩と、と金作りを狙うが、後手は△7四金で飛車を追う。
第26図からの指し手
△9四桂▲9六飛△8三銀(結果10図)
そっぽの桂
第26図から普通に△8五歩と飛車を追うのは▲9六角(参考13図)が好手で、△8九馬は▲8五角、△同馬は▲同飛(以下△8四桂には▲8二歩成〜▲7二とが速い)で助かる。そのため△8五歩に代えて△9四桂と打つのが好手で、▲9六角には△8六桂で馬に紐がつく、というからくりである。
▲9六飛に冷静に△8三銀と払った結果10図は互角ながら△7七角成をやった甲斐はありそうだ。後手はここから△9六馬、△8八馬、△8五金を選べる。
分岐「35手目▲3二飛成」
第24図からの指し手②
▲3二飛成(第27図)△同玉▲7七銀△2六桂▲2九銀△8九飛成▲7九金打△9九竜(結果11図)
最善の対応
飛車を取る変化は後手もやれることがわかった。次に▲3二飛成(第27図)と切り飛ばす順を見ていく。実はこれが先手の正解手で先手よしになる。
▲7七同銀には一回△2六桂を利かす。後だと無視される可能性もあるからだ。
△8九飛成に▲7九金打もしっかりした受けで、結果11図は後手が飛車2枚持っているが、それだけでは先手陣を攻略するのは難しい。以下▲8二歩△2七飛か▲2七歩△8七歩か。先手よしとはいえ、当然ながら激戦は続くと思う。
ここまででフローチャート1枚目の変化を終わりにします。パート2以降は以下のページで。
パート2
パート3
パート4