この記事はパート2の記事の続きとなっています。続きなので基本図などは前回までの記事の図を参照ください。
パート1
パート2
今回はフローチャートの3枚目の変化(29手目▲4六歩〜43手目▲7五歩)を見ていきます。
- 分岐「29手目▲4六歩」
- 分岐「34手目△8七歩」
- 分岐「34手目△6四歩」
- 分岐「36手目△4四同金」
- 分岐「36手目△3二玉」
- 分岐「36手目△8六歩」
- 分岐「39手目▲8五歩」
- 分岐「40手目△8二飛」
- 分岐「41手目▲4三歩成」
- 分岐「41手目▲2三歩」
- 分岐「40手目△7四飛」
- 分岐「39手目▲6六角」
- 分岐「41手目▲4五桂」
- 分岐「41手目▲4三歩成」
- 分岐「43手目▲3三角成」
- 分岐「43手目▲4五桂」
- 分岐「43手目▲8三歩」
- 分岐「44手目△8三同飛」
- 分岐「44手目△8三同銀」
- 分岐「47手目▲5三桂不成」
- 分岐「47手目▲5三桂成」
- 分岐「39手目▲4三歩成」
- 分岐「41手目▲6六角」
- 分岐「41手目▲8五歩」
- 分岐「43手目▲2三歩」
- 分岐「49手目▲2一と」
- 分岐「49手目▲6九玉」
- 分岐「49手目▲5九玉」
- 分岐「53手目▲6六角」
- 分岐「53手目▲4四歩」
- 分岐「43手目▲7五歩」
分岐「29手目▲4六歩」
第42図からの指し手③
▲4六歩(第65図)△3三金▲4四飛△同歩▲4五歩(第66図)
分岐C
基本図から▲9六歩△8二飛▲7七桂△4四角と進んだ局面で、前パートでは▲6五桂と▲4五桂を見てきた。大まかな結論としては、桂をすぐに跳ね出す変化は後手がやれることがわかった。今度は桂をすぐに跳ねない変化、すなわち▲4六歩(第65図)の桂を跳ねる土台作りを見ていく。
対して後手は△3三金で飛車を捕獲しに行くのが良い。代えて△3三銀と銀で行く手もあるが、5三の地点が薄くなるのが気になるため、△3三金に絞って解説する。
先手は飛車角交換は承知で、直後の▲4五歩(第66図)が、▲4六歩を突いている場合の継続手である。ここで後手に選択肢がある。
分岐「34手目△4五同歩」
第66図からの指し手①
△4五同歩(第67図)▲8三歩△同銀▲2三歩△2八飛▲2五角(結果26図)
素直に取るのは悪手
先手が歩を突っかけて来たところで、後手の応手は、①△4五同歩、②△8七歩、③△6四歩が考えられる。
まずは素直に取ってみる。自然な手だがこれは悪手である。▲8三歩のたたきが好手だからだ。△同飛は▲6五角があるため△同銀だが、▲2三歩とこちらに打つのも上手い手。対して、(A)△2三同歩は▲2二歩、(B)△3二玉は▲2二歩成△同玉▲6五桂で角のラインに入り、(C)△2三同金は▲4三歩△同銀▲6五桂(参考28図)と攻め込まれていずれも後手敗勢になってしまう。
本譜の(D)△2八飛は▲2二歩成に△同飛成を用意する最善の頑張りだが、▲2五角(結果26図)が金取りになるぴったりの角打ちで先手優勢である。以下、△5一玉には▲2二歩成、△4三銀には▲6五桂で後手は何もできない。
分岐「34手目△8七歩」
第66図からの指し手②
△8七歩(第67図)▲9七角△8九飛▲6五桂△9九飛成▲5三角成(第68図)
斬り合い
普通に取るのは先手の言いなりになってしまった。今度は△8七歩(第67図)と角を直接攻め立てる変化を見ていく。
▲9七角に△8九飛がこの変化の継続手である。香を拾われるのは受からないが、先手の▲6五桂のさばきも9七角と合わさっているため大きな手である。5三を受けようと△5二金は▲7一角、△5二玉は▲1六角(参考29図)で困るため後手は△9九飛成で攻め合うことになる。これに▲5三角成(第68図)も当然の斬り込みである。激しい戦いになった。
分岐「40手目△5三同銀」
第68図からの指し手①
△5三同銀(第69図)▲同桂成△3一角▲7五角△6四香▲同角△同歩▲4三香△同金▲同成桂(結果27図)
暴れる成桂
先手が馬を突っ込んできた手に、まずは素直に取ってみる。
▲同桂成に、▲4二銀を防ぎながら成桂に当てる△3一角は最善の受けである。▲7五角の足し算に△6四香と受けたところでは先手切れ模様に見えるが、ばっさり▲同角と取ってしまえば攻めが繋がっている。
成桂を軸に後手玉を攻め立てた結果27図は先手優勢である。後手は受けに適した駒がない。
分岐「40手目△5一香」
第68図からの指し手②
△5一香(第70図)▲4二馬△同玉▲4四歩△同金▲7七角△5五角▲6六銀(結果28図)
やはり先手有利
馬を素直に取ると成桂に活躍されてしまった。今度は△5一香(第70図)と辛抱してみる。
ここで馬を逃げるのは△8八歩成の反撃を食らうため、先手は▲4二馬と突っ込む一手で、△同玉に▲4四歩が大きな取り込みである。放っておくと▲4五桂の勢いが凄いし、本譜のように取っても▲7七角の竜金両取りが決まる。
△5五角に▲6六銀と冷静に対処した結果28図は先手有利である。後手はまとめきれない。結局、△8七歩と攻めるのは先手にうまく反撃されるため良くないということになる。
分岐「34手目△6四歩」
第66図からの指し手③
△6四歩(第71図)▲4四歩(第72図)
最善手
▲4五歩の開戦の局面に戻り、ここでの最善手は▲6五桂を防ぐ△6四歩(第71図)である。先手が▲4四歩(第72図)と取り込んだところで、また後手に選択肢がある。
分岐「36手目△4四同金」
第72図からの指し手①
△4四同金(第73図)▲8三歩△同銀▲8五桂△3三銀▲4四角△同銀▲4三角(結果29図)
先手好調
まずは取り込まれた歩を取り返す変化を見ていくが、やはり素直に応じるのは悪手になる。
ここでも▲8三歩のたたきが有効になる。△同銀に▲8五桂が金当たりになって気持ちが良いからだ。なお、▲8三歩に△同飛なら▲8四歩△8二飛(△同飛は▲6六角)▲8五桂(参考30図)でやはり桂が跳べる。
▲8五桂に△4三歩と受けると▲4五歩で角を成らせてしまうので△3三銀だが、角を切り飛ばして金桂両取りの角を放った結果29図は先手好調である。角のラインに金が入るのは良くないようだ。
分岐「36手目△3二玉」
第72図からの指し手②
△3二玉(第74図)▲8六歩△2三金▲4五桂△5二金(第75図)
一例
続いて、△3二玉(第74図)と一段玉を回避する変化を見ていく。▲4三角などの打ち込みのスキをなくしているが、4四の歩に近づくのが怖いところだ。ここから▲8五歩△5二金などで持久戦に移行するのも考えられ、それも一局だが、本譜は先手があくまでも攻めを狙う順である。
▲8六歩は▲8五桂の余地も残す、やや攻撃的な受けである。対して△同飛は、せっかく一度引いた飛車がまた危険地帯におびき寄せられてやりづらいため、△2三金で4五桂の当たりを事前に避けておく。▲4五桂には△5二金(第75図)で補強する。
第75図からの指し手
▲4三歩成△同金▲4四歩△5四金▲2四歩△同金▲4三歩成△同玉(第76図)
軽手で乱す
先手は▲4三歩成から後手陣を乱しにかかる。△同銀などとやると▲7一角(参考31図)で終わってしまうため、5三に効きを残すような対応を心がけよう。先手は▲2四歩で2二の地点のひもを外してから▲4三歩成を決行する。
第76図からの指し手
▲6五桂△4四歩▲5三桂左成△同銀▲同桂成△同金▲4五歩△5六歩(結果30図)
優劣不明
▲6五桂で角道が通った。▲2四歩の効果で▲5三桂左成と▲2二角成の両狙いが受からない。後手としては▲2二角成の方は許せないため、△4四歩で角道を止める。先手はそこで▲7一角(参考32図)でさらに5三に利きを足す手も考えられ、これも有力である。本譜は5三の地点で精算して、▲4五歩が筋中の筋という手。
しかしながら後手の△5六歩(結果30図)も中住まいに対する筋の攻めで、優劣不明の戦いである。どちらの攻めが速いのか、これは終盤力勝負になりそうだ。
分岐「36手目△8六歩」
第72図からの指し手③
△8六歩(第77図)▲8四歩△同飛(第78図)
広い手
後手は△3二玉と受ける手の他に、△8六歩(第77図)と攻め合い志向の手もある。展開によっては激しくなるため、攻め将棋の人はこう指すのが性に合うだろう。
先手は無難に▲8五歩と収めるのも有力である。これなら後手も△3二玉や△5二金と整えて十分な構えになる。
本譜は、▲8四歩で「大駒は近づけて受けよ」に則した、より積極的な展開を見ていくことにする。
分岐「39手目▲8五歩」
分岐「40手目△8二飛」
第78図からの指し手①
▲8五歩(第79図)△8二飛(第80図)
無難な変化
▲8四歩△同飛で飛車を釣り上げたところで先手に選択肢がある。まずは、▲8五歩(第79図)で先手を取りに行く手である。これに後手の飛車の逃げ場所は8二と7四の2箇所あるが、とりあえず無難な△8二飛(第80図)を調べてみよう。
分岐「41手目▲4三歩成」
第80図からの指し手①
▲4三歩成(第81図)△同金▲2三歩(第82図)
揺さぶり
飛車を引かせたため先手には攻めの手番が回ってきた。▲6八玉などと自陣を整備すれば後手も△5二金と引き締めて互角で、これからの将棋になる。
先手の攻めはいくつかあるが、まずは▲4三歩成(第81図)と歩を成り捨てる手から見ていく。拠点を消すようだが、この局面では立派な手である。
対して△同銀は▲4五桂があるため、△同金と取る一手。そこで▲2三歩(第82図)が狙いの継続手である。歩を使って後手陣を揺さぶりに行く。
第82図からの指し手
△2八飛▲2七角△2三歩▲3九金△2七飛成▲同銀△3二玉(結果31図)
難しい戦い
後手は▲2二歩成をどう受けるかだが、△2三同歩は▲2二角、△3二玉は▲6五桂(参考33図)で攻めが繋がってしまう。そのため、ここは△2八飛と飛車の力で受けるのが最善である。
先手は▲2七角で飛車筋を止めつつ、▲3九金の捕獲を目指す。△2三歩に▲2二歩はややぬるく、△3三桂で後手の調子がいいため初志貫徹で▲3九金。
後手は飛車角交換に応じ、△3二玉と飛車打ちを消した結果31図は互角の形勢である。後手は△8七角や△4六歩などの攻め筋に期待だ。
分岐「41手目▲2三歩」
第80図からの指し手②
▲2三歩(第83図)△同金▲4五桂△5二玉(第84図)
別の攻め筋
先手の攻めとしては▲2三歩(第83図)も考えられるところである。この歩はこの研究で常に出てくる手筋である。
今回の場合は、△2八飛と打つよりは金で取れるなら△2三同金で取りたい。そこで先手は▲4五桂。▲2三歩を入れずに単に▲4五桂は△4四金があるので、歩の利かしを入れたということだ。
後手は次の▲4三歩成〜▲5三桂成(不成)を防いで△5二玉(第84図)と上がる。
第84図からの指し手
▲2四歩△同金▲6五桂△同歩▲4三歩成△同銀▲2二角成△4六桂(結果32図)
一本道の攻め
先手の▲2四歩は、2二の歩を浮かせるための大事な利かしである。△同金に▲6五桂から角道を通して猛攻を見せる。▲6五桂からの攻め筋はほぼ一本道で、後手も受け入れるよりない。
△4六桂と後手も反撃を見せた結果32図は互角である。以下、▲6八玉△3八桂成▲同金△4九飛(参考34図)から激しい攻め合いが予想される。
分岐「40手目△7四飛」
第79図からの指し手②
△7四飛(第85図)▲2三歩(第86図)
横に逃げる変化
▲8五歩の飛車取りに、△8二飛ではなく△7四飛(第85図)と、横に逃げる手もある。△7六飛の筋がある分、反発力がある。
ここで先手が▲6八銀などと陣形整備してくれば△3五歩(参考35図)が好手である。以下、▲同歩は△4四金の桂頭攻めの要領で攻めていけばよい。
そのため、先手は攻めることになる。▲2三歩(第86図)が先手の最善手。やはりここを攻めるのが後手陣の急所になる。
第86図からの指し手
△2八飛▲2二歩成△同飛成▲4五桂△7六飛▲1六角△3四歩(結果33図)
遠見の角に注意
▲2三歩に△同金だと▲9八角(参考36図)が好手の遠見の角である。次に▲7五歩△同飛▲2一角成(▲4三歩成)の筋を狙っており、この角筋が妙に受けにくいのだ。受けるなら△5四飛くらいだが、▲9七角〜▲8六角とするくらいで先手優勢になる。
そのため、後手は△2八飛と飛車の力で受け止めるのが最善になる。先手は▲2二歩成〜▲4五桂と普通に進める。対して△4四金は▲7五歩△同飛▲6五桂が激痛だから金は逃げられない。
▲1六角を冷静に受けた結果33図は互角の形勢である。後手は駒損にはなるが、桂を持てば△4六桂が楽しみになる。
分岐「39手目▲6六角」
第78図からの指し手②
▲6六角(第87図)△8二飛(第88図)
角を据える
▲8四歩△同飛と飛車を釣りだした局面に戻り、▲8五歩ではなく、▲6六角(第89図)と角を設置して歩を温存する指し方を見ていく。飛車を誘い出したため、やってみたくなる手だ。
対して、△7四飛は▲8二歩があるため△8二飛(第88図)と引くほうが勝る。これは歩を温存した効果だ。
分岐「41手目▲4五桂」
第88図からの指し手①
▲4五桂(第89図)△5二金▲3三桂成△同銀▲8四歩△4六桂(結果34図)
攻め続ける
飛車を引かせたところで、▲8五歩などと弱気に受けると、先手だけ角を手放してしまったことになり、△5二金〜△3二玉のように後手にゆっくりした展開にされると悪くなる。そのため、先手は攻め続けるしかない。
まずは▲4五桂(第89図)と跳ねる手から見ていく。金を逃げると▲4三歩成などから先手の攻めが繋がってしまう。△5二金は4三と5三を両方強化する最善手である。
先手は金を取るが、意外に先手からの攻めがこれ以上ないのだ。飛車先を止めるくらいだが、取った桂で△4六桂(結果34図)が期待の反撃で後手有利である。先手は左桂が跳ねられておらず、玉が狭いのがその理由だ。
分岐「41手目▲4三歩成」
第88手目からの指し手②
▲4三歩成(第90図)△同銀(第91図)
本命の攻め
▲4五桂では攻めがうまく行かない事がわかった。続いて、角のラインを活かすために▲4三歩成(第90図)と成り捨てる変化を見ていく。これには後手は△同銀(第91図)と取る一手。そこで先手に選択肢がある。
分岐「43手目▲3三角成」
第91図からの指し手①
▲3三角成(第92図)△同桂▲6五桂△同歩▲3三角成△4二歩▲4四歩△3二銀(第92図)
勢いの良い攻め
先手の攻めの継続手だが、まずは▲3三角成(第92図)と突っ込む手から見ていく。△同桂に▲6五桂が先手の期待の跳躍である。後手は▲5三桂成(不成)と▲3三角成の両狙いは同時に防げないため△同歩と桂を取り、▲3三角成に△4二歩で耐える。
第93図からの指し手
▲2四馬△2三歩▲3五馬△3四歩▲同馬△4六桂(結果35図)
急所の桂
補足だが、前譜▲4四歩に代えて▲4五桂は△4六桂▲4七玉△3八桂成▲5三桂成に△3七飛▲5八玉△6三銀(参考37図)と受ければ後手が耐えている。
本譜は▲4四歩としてから▲2四馬で△4六桂を防いできたが、△2三歩〜△3四歩としつこく馬をずらしに行く。△3四歩に▲4六馬と逃げると後手への攻めがなくなるため、△8七歩成からぼちぼち行けばよい。
▲3四同馬に△4六桂と狙いの桂を実現させた結果35図は後手優勢である。先手がどう応じても形を乱すことができる。
分岐「43手目▲4五桂」
第91図からの指し手②
▲4五桂(第94図)△4四歩▲8三歩△同飛▲8四歩△8二飛▲3三桂成△同桂(第95図)
一目厳しい攻め
先手は、すぐに角を切っていくのは失敗した。続いて、▲4五桂(第94図)と桂も攻めに参加させるのはどうか。▲3三桂成と▲5三桂成(不成)の両狙いがあり、一目厳しい攻めである。
後手は△4四歩でとりあえず受け止めるよりない。先手は桂を動かす前に一発▲8三歩を入れておく。△同銀なら6一へのひもが外れるため、▲5三桂不成から後手陣を乱すことができる。△同飛には▲8四歩△8二飛としてから▲3三桂成と金を取る。
第95図からの指し手
▲6五桂△同歩▲4四角△6六桂▲同角上△同歩▲3三角成△4二歩▲5五桂△4六桂(結果36図)
派手な応酬
先手は▲6五桂と跳ねるのが狙いの強襲で、角2枚を通して勝負していく。△同歩▲4四角に△同銀では▲同角(参考38図)で先手の思うつぼとなるが、△6六桂の歩頭桂が角の連携を断つ好手で、桂の犠打で先手の勢いを抑えることができる。
以下△4二歩まではほぼ必然の進行になる。先手は▲3三角成〜▲5五桂で次々に上から攻めていくが、△4六桂と反撃の桂を打った結果36図は互角である。この桂は急所ではあるが、7七の地点が空いているので先手玉は広く余裕がある。そのため、後手は先手の攻めに耐えられるかで勝負が決まりそうだ。
分岐「43手目▲8三歩」
分岐「44手目△8三同飛」
第91図からの指し手②
▲8三歩(第96図)△同飛(第97図)
先に入れる
今度は▲4五桂の前に▲8三歩(第96図)を入れる手を見てみます。▲4五桂を跳ねる前の場合は飛車で取るのが勝ったため、まずは飛車で取ってみる。この違いがどう影響するだろうか。
第97図からの指し手
▲8四歩△8二飛▲6五桂△同歩▲3三角成△4六桂▲6八玉△3三桂▲同角成△4二歩▲4五桂(結果37図)
大きな違い
後手が飛車で取ってきた場合はまず、▲8四歩で追い返しておく。△8二飛に▲4五桂なら△4四歩で先ほどの変化に合流するが、先に▲6五桂(途中図)と左桂をさばいておくのが好手順である。先ほどと違い4四に歩がいないため、▲3三角成でダイレクトに二枚替えができるのが大きいのだ。
後手は一回△4六桂を利かしてから二枚替えに応じるが、▲4五桂と右桂を活用した結果37図は先手有利である。先手は▲5五桂や▲4四歩の加勢もあり、攻めが切れることはない。
分岐「44手目△8三同銀」
第96図からの指し手②
△8三同銀(第98図)▲4五桂△3四金(第99図)
飛車の力
▲4五桂を跳ねる前の▲8三歩には△同銀(第98図)と銀で取る方が勝る。▲4五桂には△3四金(第99図)と逃げておくのが良い。銀で取れば飛車が遠く2二の地点まで利いているからこそできる応手だ。
分岐「47手目▲5三桂不成」
第99図からの指し手①
▲5三桂不成(第100図)△5二玉▲6一桂成△同玉(結果38図)
意外に
△3四金で桂取りにされたため先手は5三に桂馬を跳ねる一手だが、その桂をひっくり返すか否かの選択がある。
まずは不成から見ていく。▲8三歩△同銀でひもを外したため、自然な手である。
後手も自然に応じて金桂交換になった結果38図は、陣形差が大差なものの形勢は意外にも互角である。先手陣は△4六桂を消さないとすぐに寄せられるのに対して、後手陣はスカスカなものの飛車が守りによく利いている。
分岐「47手目▲5三桂成」
第99図からの指し手②
▲5三桂成(第101図)△5二金▲同成桂△同玉(結果39図)
桂の価値
桂馬を成る手もある。今度は4三の銀に狙いをつけた一手だが、ここで△5二金と強く当てる手が好手である。この戦いは桂の価値が高いため成立している手だ。
結果39図はやはりいい勝負だが、▲2二角成とすると△4六桂のほうが速い攻めになる。左桂を跳ねていない先手玉は狭いのだ。
分岐「39手目▲4三歩成」
第78図からの指し手③
▲4三歩成(第102図)△同金(第103図)
第3の攻め
▲8四歩△同飛と釣り上げた局面まで戻り、▲8五歩、▲6六角に代わる第3の手として▲4三歩成(第102図)と成り捨てる手を見ていく。▲8五歩△8二飛を入れて成り捨てる変化はやったが、それに比べて8筋を受けていない分、より強気の手といえるだろう。
成り捨てには△同金(第103図)と取っておく。△同銀は▲4五桂の筋があるため、嫌なものはなるべく回避しておきたい。
分岐「41手目▲6六角」
第103図からの指し手①
▲6六角(第104図)△8七歩成▲8四角△8八と▲同金△3五歩(結果40図)
引きは許されない
先手は金を移動させたので、▲6六角(第104図)で両取りを掛けてみたくなる。対して、△8二飛と引くようでは▲8三歩から連打して飛車先を止めてから▲2二角成で馬を作られて後手が悪いため、後手も△8七歩成から踏み込むしかない。
結果的に飛車角交換となるが、△3五歩(結果40図)の桂頭攻めが案外嫌味な手になるため、後手が十分戦える。後手は△1四角や△2八飛などを組み合わせて先手陣攻略を目指すことになりそうだ。
分岐「41手目▲8五歩」
第103図からの指し手③
▲8五歩(第105図)△7四飛(第106図)
安全策
▲6六角は△8七歩成から突っ込む順が発生して後手が戦えた。今度は▲8五歩(第105図)で歩成を消しておく変化を見ていく。こちらのほうが本筋と思われる。
後手はどこに飛車を逃げるかだが、先手は飛車を逃がす手に▲2三歩で攻めをつなげる手を狙っているため、攻め合いになった時に△7六飛の反発の余地を残す△7四飛が勝る。
分岐「43手目▲2三歩」
第106図からの指し手①
▲2三歩(第107図)△3五歩▲2二歩成△3六歩▲4五桂△2八飛(第108図)
攻め合い
まずは先手が予定通り▲2三歩と乱しに行く手を見ていく。対して、△同歩は▲2二角から先手だけ成り駒を作られてしまい後手不満である(悪くなるわけではない)。
後手は、△同歩よりもさらに良い手がある。それが△3五歩で、強く戦うことでペースを握ることができる。対して、先手も▲2二歩成で踏み込むしかない。代えて▲3五同歩では△3六歩からどんどん攻め込まれて悪くなる。
分岐「49手目▲2一と」
第108図からの指し手①
▲2一と(第109図)△3七歩成▲2九歩△3八飛成▲同金△同と(結果41図)
攻めがつながる
△2八飛と打たれた局面で先手は、攻め合いを続けるか、受けに回るか、という選択を迫られる。
まずは▲2一と、と攻め合いを選択してみる。これには△3七歩成と攻め合うほうが攻めの速度としては速い。▲2九歩と、このタイミングで受けても△3八飛成と突っ込んでいく。
結果41図は、と金が残り後手有利である。次の△7六飛が△4九銀以下の詰めろになるからである。少し前に△7六飛が反発力があると書いたのは、こういう場面の時に役立つからだ。
分岐「49手目▲6九玉」
第108図からの指し手②
▲6九玉(第110図)△3七歩成▲同銀△2九飛成▲3九歩△2二竜(第111図)
今度は受ける
先手の攻め合いは無茶な動きだった。そこで今度は、▲6九玉(第110図)と受けてみる。飛車の横利きを避けることで、駒を使わずに受けている。
後手もすぐの攻めはないため、△2二飛成でと金を外す方針を採るが、一旦△3七歩成〜△2九飛成で先手陣を乱してから、と金を外しておく。
第111図からの指し手
▲4四歩△同金▲6五桂△同歩▲4三歩△3三歩▲4二歩成△同玉(結果42図)
正確に受ける
後手はと金を外し、次に△4四歩で桂取りに打たれると完封されてしまうため、先手はここで攻める。▲4四歩〜▲6五桂で角を使っていく筋はこれまでにも何回も出てきた。後手は▲6五桂に△同歩と応じることができるのも△7四飛の効果である。
先手の▲4三歩はいやらしい歩である。例えば、△同銀などの下手な受けでは▲5三桂不成△5二玉▲6一桂成△同玉▲4五歩(参考39図)で潰れてしまう。そこで、△3三歩として、銀は犠牲にして受けるのが良い。角の利きを二重に止めておけばうっかりがなくなる。
結果42図は2二の竜の力が大きく後手有利である。先手は4五の桂を支えるが、後手は△4三歩と金を支えてから△7六飛が楽しみになる。
分岐「49手目▲5九玉」
第108図からの指し手③
▲5九玉(第112図)△2二飛成▲7五歩△同飛(第113図)
先手の工夫
今度は、先手が▲5九玉(第112図)と引き場所を変えてみる。▲6九玉の場合は△3七歩成▲同銀△2九飛成が金当たりになっていたが、▲5九玉ならば金にひもがついており、△2九飛成には攻めの手を指せる仕組みである。そのため、後手は△3七歩成とやらずに単に△2二飛成としてみたい(もちろん△3七歩成も有力である)。
先手は▲7五歩△同飛(第113図)と吊り上げておく。第一感は、あの手を指したくなるが・・・
分岐「53手目▲6六角」
第113図からの指し手①
▲6六角(第114図)△2八竜▲7五角△4八歩▲同金△4七歩▲4九金△3七歩成▲同銀△同竜(結果43図)
上手く行かない
▲6六角(第114図)の飛車竜両取りが気持ちよく、一見先手成功に見えるが、これは後手が仕掛けた罠でうまくいかない。
7五の飛車は見捨てて、スッと△2八竜と入るのが好手である。先手はもちろん▲7五角だが、△4八歩〜△4七歩が厳しいたたきの歩で筋に入っている。
△4七歩に▲同金は△3八竜、▲同銀は△3七歩成だから▲4九金と引くが、それでも△3七歩成から攻めた結果43図は後手優勢である。先手は左辺の駒が全く働いておらず、後手に右辺だけで食いつかれてしまった格好である。
分岐「53手目▲4四歩」
第113図からの指し手②
▲4四歩(第115図)△4八歩▲同金△5四金▲6五桂△同飛▲4三歩成△4四歩▲4二と△同玉(結果44図)
やはり後手よし
▲6六角の両取りが上手く行かなかったため今度は、▲4四歩(第115図)と叩いてみる。8八の角を使う狙いである。
対して、後手は難しいところだが△4八歩と手裏剣を放つのが良い。金のはがし合いは後手に分があるため▲同金と応じますが、そこで△5四金と逃げておく。代えて△4四金は▲6五桂(参考40図)が厳しい。少し前に▲7五歩△同飛を入れたため、△6五同歩と取っても飛車の横利きがないのが痛い。
先手は、△5四金にも▲6五桂と跳ねていく。△2八竜と入れれば後手有望なため、先手は攻めを急かされている。△同飛に▲4三歩成で竜取りだが、△4四歩が冷静である。対して、▲4四同ととするのは一瞬後手陣への脅威がなくなるため、△2八竜から攻め合いに出れる。そのため、▲4二と、としますが結果44図は後手有利である。次に△4五飛と桂を取り切れれば後手陣は安泰になる。
分岐「43手目▲7五歩」
第106図からの指し手②
▲7五歩(第116図)△同飛▲6六角△7六飛▲2二角成(第117図)
先手の最善手
前の変化では後手に上手く対応されて先手が悪くなることがわかった。それでは、何がいけなかったのか。それは、▲2三歩から攻めようとしたところにある。
▲2三歩に代えて、先手は▲7五歩(第116図)〜▲6六角の筋で激しく行くほうが勝る。後手は△7六飛くらいだが、▲2二角成(第117図)で大きな馬が作れた。
第117図からの指し手
△2八飛▲1一馬△3六飛▲6九玉△5二玉(結果45図)
難解な形勢
後手は△2八飛と攻防に据えて反撃する。▲1一馬に△3六飛と回り二枚飛車の態勢である。対して本譜は▲6九玉と飛車筋からかわしたが、代えて▲2九香と飛車取りに打つのは、△3七飛成▲2八香に△4六桂(参考41図)で先手が潰れている。
▲6九玉に後手も安全圏に玉を逃した結果45図は互角の形勢である。先手は玉を逃したが、▲2九香には常に△3七飛成があるのは変わらず。
ここまででフローチャート3枚目の変化を終わりにします。パート4は以下のページより。
パート4